オブジェクトがSymbol.iteratorプロパティを実装する場合、そのオブジェクトは反復可能(iterable)であるとみなされます。

Array、Map、Set、String、Int32Array、Uint32Array等の幾つかの組み込みの型には、 予めSymbol.iteratorプロパティが実装されており、 オブジェクトのSymbol.iterator関数は、反復処理上で値のリストを返すことを保証します。

for..of 文

for..ofは反復可能なオブジェクトの繰り返し処理を行う際に、Symbol.iteratorプロパティを実行します。 下記は配列でのシンプルなfor..ofの繰り返し処理になります。

let someArray = [1, "string", false];

for (let entry of someArray) {
    console.log(entry); // 1, "string", false
}

for..of vs for..in 文

for..ofとfor..in文は、どちらもリストを繰り返し処理するものですが、その繰り返す値が異なり、 for..inはオブジェクトのキーのリストを返しますが、 for..ofはオブジェクトの数値プロパティの値のリストを返します。

両者の違いのデモを下記に示します。

let list = [4, 5, 6];

for (let i in list) {
   console.log(i); // "0", "1", "2",
}

for (let i of list) {
   console.log(i); // "4", "5", "6"
}

その他の違いにfor..inは任意のオブジェクト上で、 そのオブジェクトのプロパティを調べる方法を提供します。 一方、for..ofは反復可能なオブジェクトの値に主眼を置いています。 MapやSetなどの組み込みオブジェクトは、格納された値にアクセスするためのSymbol.iteratorプロパティを実装しています。

let pets = new Set(["Cat", "Dog", "Hamster"]);
pets["species"] = "mammals";  //※　species = 種、mammals = 哺乳類

for (let pet in pets) {
   console.log(pet); // "species"
}

for (let pet of pets) {
    console.log(pet); // "Cat", "Dog", "Hamster"
}

コードの生成

ES5とES3を対象とする場合

ES5またはES3を対象としている場合、イテレーターは値のArray型でのみ使用することができます。 for..ofのループを非配列の値で使用すると、 例えそれらの値がSymbol.iteratorプロパティを実装していたとしてもエラーになります。

コンパイラはfor..ofループを、単純なforループにして生成します。下記はその例になります。

let numbers = [1, 2, 3];
for (let num of numbers) {
    console.log(num);
}

上記は次のように生成されます。

var numbers = [1, 2, 3];
for (var _i = 0; _i < numbers.length; _i++) {
    var num = numbers[_i];
    console.log(num);
}

ECMAScript 2015以上を対象とする場合

ECMAScipt 2015に準拠したエンジンを対象とする場合、 コンパイラはそのエンジンに実装されている組み込みのイテレーターを対象としてfor..ofを生成します。

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